ネズミ色の吐息 -辻-
憎悪の息吹に霞む
白い塔
 
この視界からじゃ何も見えないやと
闇に隠れ 出て来ないのもオツなもの
似たような経験が 誰にでもあるよ
という言葉が いけなかった
 
潜る
潜る
 
潜る潜る
 
案の定 モグラと仲良くなり
太陽なんて見なくてもいい、と云われ
草の根とミミズをかじり
マンホールの奥で眠るネズミ
 
なんとか食える
が 何か足りない
と 気付けば21世紀
 
濁流と戦う日々に明け暮れ
仲間だと信じていたモグラとも 音信不通
寺町の菜の花に 話しかけても
彼は とことん無口だった
 
夕焼けが 好きになった
 
水曜日の電信柱
子供向けの雑誌に目が止まる
 
おお モモンガ
 
左を見ると歩道橋の向こうに
白い塔が立っていた
それほど遠くはなかった
ただただ 走った
 
内部の鉄骨を登る時に頭にあったのは
捨て去りたいガラクタばかりだったけど
ひとつ外すと音をたてて崩れる
頭の重さを支える 糧だと気付いた
 
地上124メートル
未体験の高さ
勢い良く飛び出してしまい
風を取り戻した
 
我にかえり 手遅れ
誰か 見ていてくれたかな…
 
電信柱の右側の家で
元飼い主が 猫を飼っていた
 

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