水のないふち(工場は閉鎖) -辻-
錆びた銃
作業用の釘を打ち付ける為の
期待外れの言葉を浴び
川原で黙る
 
重く軽く 挨拶を続け
したい事も出来なかった
腰から鎖が解かれたとたん
ふちに飲み込まれそうな気がして
 
茶碗も道具も置きっぱなし
すすけたのは 体だけじゃない、と嘘ぶき
ニュースの特集を見ると 畜生ども
どいつもこいつも 勝手な事ばかり
 
夕日のかげりが板に付いたこの国
花を持たせ 世界中の愛用品を送り出したのはこの手だぞ
土を汚す為に働いたんじゃない
今日だって タンポポが咲いているじゃないか
 
  ほら
 
私の手元に残ったものは
金でも地位でもなく 妻だった
「私なら大丈夫よ」とささくれた指で
無理矢理 肩をもまれる
 
風が鉄よりも冷たい
工場は閉鎖
中国製の包丁を歪んだ目で眺め
釣ったばかりの 魚をおろす
 
初めて妻を連れ出した川は
干上がっていた
高架下の釣り堀で 戦友と
静かな 静かな 話しをした
 
ああ どうしよう
口に出さず 妻を抱く
 

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